特集

季節の野菜通信 vol.8

季節の食材をより楽しむため、郡山ビューホテルの松岡シェフが連載する「季節の野菜通信」。 今月は「ひな祭り」に食べる料理についてお届けします!

「季春の訪れは苦味と共に」

旬の野菜で皆様はどのように春が来たと感じますか?これからの旬の野菜を味わい、苦味と共に春風の便りを感じてみませんか。

梅の花や桃の花が開花する時期や鶯の鳴き声がそっと聞こえるなど、来春の感じる瞬間は人それぞれですが、土から芽吹く新芽の力強さも春の便りを感じる一つではないでしょうか。この時季はたらの芽やふきのとうといった若芽が旬を迎えます。これらの野菜に共通する点がひとつあります。それはどれもが「苦味」を持っていてこの苦味は野菜によって成分は違いますが、寒い冬の間に滞りがちだった体内の巡りの毒素を活性化する働きがあると言われています。そもそも、「苦味」は我々にとってはとても大切な役割をはたしてくれる薬の味だとも言われていますので、それに近い効果があるのではないでしょうか。「苦味」は色々な意味でも人生経験を重ねることで「美味しい」と感じる事が出来るのかもしれません。子供には好まれない味ですが、大人にとっては食材の深みを感じる味で春の足音のようです。

三月の節句は、女の子の健やかな成長と良縁、幸せを願うお祝い「桃の節句」それにちなんだ料理の意義をご紹介させていただきます。そもそも、ひな祭りの源流は、古代中国で季節の変わり目などに健康を願って厄払いをしていたことにあり、日本には平安時代以前から三月の初めに「ひとがた」に自分の罪けがれを託して流すことがおこなわれていました。これが貴族の子どもたちの間で日常的に行われていた「ひいな遊び」が結びつき、三月三日に人形で遊ぶ習慣が生まれ、こんにちの「ひな祭り」になったそうです。

「ひな祭り」に食べる料理

ひな祭りのお祝いに食べる料理は基本的に、ちらし寿司・はまぐりのお吸い物・ひちもち・ひなあられ・白酒等がありますが、料理ひとつひとつに大事な意味合いもあります。「ちらし寿司」海老やレンコン・錦糸卵など縁起が良い食材と沢山の具材を使っているので、成長しても食べる物に困らないようにという願いが込められていて彩りが美しく華やかな女の子のお祝いにふさわしい料理です。

「はまぐりのお吸い物」ひな祭りの代表的なお祝い膳の料理です。貝殻が一対になっているので相手以外とはピッタリと合わないことから、一人の人と一生涯連れ添うようにという願いが込められています。

「ひし餅」もともとは2色で白と緑色を重ねていたもので、明治時代に入ってから桃色が加わり今の3色になったという諸説があります。桃色はクチナシの実で薄く色をつけ、桃の花のイメージで(魔除け)を表し白色は雪の色で「純潔や子孫繁栄」を、そして緑色は若草で「健康や長寿」を表しているそうです。「雪の下には新芽が芽吹きやがて桃の花が咲く」今はゼリーなどで作られている物が主流になっています。

「ひなあられ」はとてもカラフルで綺麗ですよね。ですが、ただ綺麗なだけではなく、これにも意味が込められていたんです。ピンク・緑・黄・白色の4色が一般的ですが、それぞれの色が四季を表していて、自然の力を食べて健康で幸せに暮らせるようにとの願いが込められているそうです。

「白酒」はもともと中国の桃香酒と言うお酒の事だったようで、邪気を払い不老長寿を願う意味で飲まれていたお酒で、それが江戸時代に白酒に変わっていったようです。ひな祭りの定番の歌の歌詞にも出てきますよね。す~こし白酒めされたか~♪ あ~かいお顔の右大臣~♪いつの時代も飲み過ぎには注意ですね。

今年も続く年中行事、本来の由来などを子供や、孫に教えて行きたいものです。知っているのと、知らないのでは、感じ方もとらえ方も変わってくるかもしれませんね。教えてあげることによって旬の節句に対する感謝の気持ちを感じて日本の文化の大切さを学んでほしいです。
松岡 正 松岡 正

郡山ビューホテル株式会社料理長 群馬県出身、1987年より前橋東急インホテルに勤務。1990年からフランスで1年間修行をつみ、1991年高崎ビューホテルへ勤務。2000年から郡山ビューホテルへ勤務し、2006年には現職に就任。フランス料理会の名誉とされる日本エスコフィエ協会ディシプルを受賞し、現在に至る。