インタビュー

次代を担う農業者vol.7

次代を担う農業者へインタビューvol.7 タマネギ(浜の輝き・ターザン)を栽培している川島雄大(かわしま だい)さん(双葉郡浪江町)

✿地元への愛から就農

「いつかは浪江町に戻ってここで生涯を過ごすんだと決めていました」

 双葉郡浪江町はかつて農業が盛んにおこなわれていた町ですが、2013年に発生した東日本大震災および東京電力福島第一原子力発電所事故の影響で、双葉郡浪江町は町内全域に避難指示が出され、長らく人がいない町となっていました。

 川島雄大さんは避難後、県外の会社に勤めていましたが、「浪江に戻りたい」という気持ちから2020年に浪江町に戻り、農業を始めました。
 震災前、川島さん宅では兼業農家として稲作を中心に行っていましたが、原発の影響で避難、農業ができない状況でした。

 「いつかは浪江町に戻って、地元で生涯を過ごすんだと決めていましたし、周りにもそう宣言していました」と地元浪江に対する想いを語る雄大さん。
 タマネギ栽培を始めたきっかけについては、「きっかけは父親です。私が浪江に戻る1年前から先にタマネギ栽培を始めていました」と話してくれました。

 現在浪江町に住んでいるのは、雄大さん1人。父親である優(あつし)さんは、宮城県仙台市でプログラマーとして働きながら、浪江に「通い農業」という形で携わっています。
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✿農業に対する想いとこだわり

 今年農業を始めて2年目となった雄大さんですが、最初は土づくりに苦労したそうです。

 除染作業のために農地は表土をはがし、新しく土が入れられましたが、「新しい土は水はけが良くないので、栽培には不向きでした。今も試行錯誤しながら栽培をしています」と話してくれました。

 また、優さんも苦労した点について、「元々田んぼだったところを畑として作っているので、土づくりは大変です」と話しました。
さらに、補助金の対象外である重機の購入についても苦労したそうです。
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 大変なことも多い農業ですが、雄大さんは「元々定年後には農業をやってみたいなと思っていました。面白さも楽しさもありますし、なによりこの町に戻ってきたということが嬉しいです」と笑顔で語ってくれました。

 「今はまだ安定した栽培に向けて色々と試している途中です。今後は、自分なりの『こだわり』を探しつつ、作付け面積を増やしていきたいです。余裕が出てきたら、ニンニクなどタマネギ以外の野菜にも挑戦してみたいです」と雄大さん、「将来的に農業だけで生きていけるようになりたいです」と優さんがそれぞれ今後の目標について話してくれました。

 川島さん親子が作るタマネギは、当JAに全量出荷されています。
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✿オリジナル品種「浜の輝き」

 浪江町を含めたふたば地区では、避難区域解除後の営農再開でタマネギ栽培が推奨されていました。

 特に福島県浜通りのオリジナル品種「浜の輝き(はまのかがやき)」は、温暖な気候が栽培に適しているのに加え、国内の主産地が品薄となる時期に収穫するため、市場から重宝され価格が安定していることもあり、産地化に向けた主力品種として期待を集めていました。

 2016年に始まったタマネギ栽培は徐々に地区内で広がり、2021年5月にタマネギの野菜指定産地に指定され、2022年度から価格補償制度申請が可能になります。

 「浜の輝き」は多品種に比べ甘みが強く煮込み料理に適しています。

 その他にも当JAでは「ふたば産玉ねぎドレッシング」を6次化商品として加工販売し販路拡大を目指しています。
企画部・人見 企画部・人見

JA福島さくら本店・企画部企画課の人見です。 みなさまの生活に役立つ情報をお届けしてまいります!